僕(勇次)はその日、たいそう浮かれていた。
クラスの女子(星龍)に、ゲーセンに誘われたのだ。
それは本当に偶然だった、クラスメイト(きたろう)と、最新格闘ゲームの話で盛り上がっていたのだ。
「あの爽快感、あのスピード感、展開の速さ!マジ最高だよな~。」
「うんうん、久々にしっくり格ゲー見つけたって感じ!」
その言葉を聞きつけた女子(星龍)は
「君(勇次)もあの格ゲー好きなの?私もなんだ!」
と声を掛けてきた。
まさか自分に女子(星龍)が声を掛けてくるなんて思いもしなかったし、
自分がハマっている格ゲーに食いついてくるなんて思いもしなかった。
話は大いに盛り上がり、トントン拍子に「いつ一緒にゲームをしに行くか」まで進み、
今日という日を迎えたというわけだ。
まあ、二人だけでなく、クラスメイト(きたろう)も一緒なんだけど。
「ここだよ!お気に入りのゲーセンなんだ!」
放課後、クラスの女子(星龍)に誘われてたどり着いたゲーセンは、
とても女子が通っているとは思えない、古く寂れた、よく言えば「昔ながらのゲーセン」だった。
いや、ゲーセンなのか?古いお店にしか見えないような気もする。
店の前には角が割れたネオン看板がちょこんと置いてあって、
【50円ゲーセン ごぼうセクスィ~】(ごぼうセクスィ)
と書いてある。
どんな名前のゲーセンだよ・・・。
「おじさーん!やっほー!」
クラスの女子(星龍)が店の奥に向かって元気に挨拶する。
薄暗いゲーセンの奥、カウンターに、けだるそうに座っている男(daitaiyou1)がいる。
店長だろうか?
「だいたいよう!お前は毎日来すぎなんだよ!」
「えへへ、だって楽しいんだもん!今日は友達連れてきたよ!」
クラスの女子(星龍)がこちらに目線を送る。
「こ、こんにちは。」
「おう、ゆっくりしてけよ」
店長らしき男(daitaiyou1)はカウンターに頬杖をついたまま、反対の手をあげて呼応した。
「よーし!それじゃあ遊ぼう!」
クラスの女子(星龍)が筐体に座る。
僕(勇次)のハマっている、「海賊」(海賊)というタイトルの格ゲーだ。
その名の通り、色んな海賊キャラクターの出てくる格闘ゲームで、タイトル通りすごくシンプルなシステムだが奥が深い。
昨今の色んなシステム満載の格ゲーと真逆を行くゲームだが、それが功をそうしたのか、最近は一旦引退して大人になった人達も巻き込み、一大ブームとなっている。
そこそこ品薄だと聞いてたが、そういやここ(ごぼうセクスィ)、全部「海賊」(海賊)の筐体じゃないか!
大手でも2~3セットあればいい方なのに・・・すげえな。
「おい、ぼーっとしてないでやろうぜ!俺、最近ベーリング海の荒くれ(エージェント東)使ってるんだ。」
クラスメイト(きたろう)がクラスの女子(星龍)の前だからか、いつも以上に張り切っている。
「キャラ選択渋いな、んじゃ俺も最近練習している日本海の番人(今井康浩)使うか~!」
クラスの女子(星龍)も交え、勝ったり負けたりを繰り返し楽しんだ。
彼女(星龍)は紅海の妖精(グラスハート)を使っていた。美しく妖艶な女キャラで、男女問わず人気のキャラだ。
「あー!もう、結構負けちったな~!君たち、強いね!」
クラスの女子(星龍)が悔しそうに筐体の向こう側からこっちにやってきた。
「まあ俺(きたろう)ら、結構やってるからさ~。」
「なるほどね、次回、リベンジだな!」
そういって彼女(星龍)は嬉しそうに笑った。
「私(星龍)、ほんと毎日いるから、また来てよ!」
「うん、もちろん、すげえ楽しかったわ。」
僕(勇次)はそう、即答した。
「Guten Tag.あら、珍しいわ、あなた(星龍)の友達?」
そろそろ帰ろうか、という頃合いに、クラスの女子(星龍)の後ろから茶色のロングヘアーの女性(Schweinhaben)が声をかけた。
青い瞳・・・。海外の人だろうか?
「お久しぶりです!はい!クラスメイトなんです!」
「それはとてもいいわね。もう帰るとこかしら?Auf Wiedersehen. またいらっしゃい。」
茶色のロングヘアーの女性(Schweinhaben)はにこりと微笑み、手を上げた。
「あの人(Schweinhaben)ねえ、地中海の死神(れおらむ)使ってて、すっごい強いんだよ~!」
帰り道、興奮しながらクラスの女子(星龍)が、あの海外の女性(Schweinhaben)について語っていた。
「すっげー美人だったよなー。大人の女!って感じ!」
クラスメイト(きたろう)が相槌を打つ。
「まあたしかに。あんな人も格ゲーすんだなーって感じだったな。」
女性が格ゲーってだけでも珍しいのに。
「あ、でもね」
クラスの女子(星龍)が思い出したかのように言葉をはさんだ。
「あのゲーセン(ごぼうセクスィ)、やたら女性が多い気がするよ。」
それを聞いた僕(勇次)とクラスメイト(きたろう)は、
明日も行かねば
と心に決めたのだった。
(続く)