「そんなバカな・・・。」
僕(勇次)は呆然と立ち尽くしていた。
「こないだは7割くらい勝ててたのに・・・。」
「普段からそんな本気だすと思う?」
金髪の女性(LEINAman)はジョー(ジョー猫)を撫でながら微笑んだ。
「どうするの~?コイン、もうないんでしょ?」
にやにやと僕(勇次)を煽る。
「私、3枚で全裸よ?」
「やりますよ!!」
僕(勇次)はカウンターまで走っていった。
クソッ!
裸が見たいとか、そういう気持ちもあったけど、何より1勝もできないのかよ!!
とにかくそれが悔しかった。
・・・・それから2時間が経過。
何度コインを貰いに行ったのだろう、僕(勇次)らは負けに負けた。
普段会う女性たちはみんな、僕(勇次)らに手を抜いてたんだ。
クラスの女子(星龍)にすら、1勝もできなかった。
僕(勇次)ら、つまりクラスメイト(きたろう)と合わせて勝利できた数は、初戦の和服の美女(Snow合気柔術)の1勝だけ。
足袋を脱がせたのみだった。
今思えば、あれも手を抜かれていた、サービスだったんだろう。
あまりの勝てなさに、そしてコインもまたすべて無くなった今、どっと疲れがこみ上げてきた。
「・・・帰るか。」
クラスメイト(きたろう)がボソッと呟いた。
・・・もう20時か。いい加減帰るか。
僕(勇次)らが鞄を持ち、お店から出ようとしたその時だった。
「お客様、どちらへ?」
入口に見知らぬ男性(じゃが丸@闇社会の最底辺)が門番のように立っていて、僕(勇次)らに声を掛けた。
「え、いや。もういい時間だし、帰ろうかと。」
「かしこまりました。精算ははお済ですか?」
精算?精算ってなんだ?
「イベントで配られたコインの精算です。」
僕(勇次)らがきょとんとしてると、門番の男性(じゃが丸@闇社会の最底辺)が説明した。
そういえばゲーム代も無料だったな。
そういう精算もしなきゃいけないのかな?
「いえ、精算はしていないです。」
僕(勇次)はきっぱりと答えた。
「それではカウンターで、精算をお願いします。」
門番の男性(じゃが丸@闇社会の最底辺)に指示されたように、僕(勇次)らはカウンターに向かい、
店長らしき男(daitaiyou1)に声をかけた。
「あの、帰ります。精算を、と入口の人に言われました。」
「おう、ちょっと待ってな。」
店長らしき男(daitaiyou1)がパソコンを弄り、画面を確認して紙に何かを書き出した。
「ほい、お前はこれ。お前さんはこっち。」
クラスメイト(きたろう)と僕(勇次)にそれぞれ、その書いた紙を渡した。
えっと・・・3000・・?
0が・・・えっと・・・
・・・300万
・・・300万?!
僕(勇次)は目を疑った。
何度も何度もその紙を確認した。
間違いない、300万である。
横をみるとクラスメイト(きたろう)も目を丸くしている。
チラッと見えたが「4」と見えたので、恐らく400万だろう、俺よりやってたし・・・。
とはいえ、この法外な金額、何かの間違いだろう。
「あの、こんなに使った記憶はないんですけど・・・。」
僕(勇次)は恐る恐る店長らしき男(daitaiyou1)に申し出た。
すると店長らしき男(daitaiyou1)は睨みをきかせながら煙草を取り出した。
「あー。なんも知らんやつか。だいたいよう、子供を連れてくんなっつーの。」
独り言のようにぼやき、そして煙草に火をつけ、一吸いした。
「あのコインで莫大な金が動いてんの。そんだけ。」
そんだけって・・・。
「いやでも、僕(勇次)ら、こんなお金あるわけないですし・・・。」
「ここで働いてもいいし、お前ら売っぱらってもいい。親に泣きついてもいいぞ。」
そんなバカな話あるか!
そんなバカな話なんかあるはずないとわかっていても、僕(勇次)の足は震えていた。
逃げようにも、入口は一つだ。あの屈強な門番の男性(じゃが丸@闇社会の最底辺)を逃れて脱走は不可能だ。
「け、ケーサツ!!」
クラスメイト(きたろう)が震えた声でそう叫んだ。
「け、警察に、い、いいますよ!」
精一杯、勇気を振り絞って出た声で、そう言い放った。
「警察、ねぇ。」
店長らしき男(daitaiyou1)はまた煙草を大きく一吸いした。
「どうします?ボス。」
店長らしき男(daitaiyou1)は、僕(勇次)らの背後に目を合わせた。
恐る恐る振り向くと、そこには、明らかにカタギじゃない男(黒★彡)が立っていた。
「あー。ガキ入れちゃったの?まぁ、いいんじゃない。ちょっと教育すればすぐ払うでしょ。」
明らかにカタギじゃない男(黒★彡)は表情を一切変えずにそう言った。
・・・もうどこにも逃げ場はなさそうだ。
お店の女性たちも、どうやらみんなグルだったようで、ゲーセンごぼセク(ごぼうセクスィ)内では
男どもが裸で泣きながら金を払っている。
絶望的だ・・・。
そう思った、その時だった。
ガコン!!!
カウンターの奥から大きな音が鳴り響いた。
そして光が差し込む。
壁が壊れた!!?
いや違う、カウンターの奥に扉があったんだ!
光の先には茶色のロングヘアーの女性(Schweinhaben)が立っていた。
「guten Abend。だから、帰りなさいっていったでしょう。」
ああ、本当に。あなたのいうことを聞いておくべきでした。
僕(勇次)は心から反省した。
「おう、今日は遅かったな」
店長らしき男(daitaiyou1)は後ろを振り向いて茶色のロングヘアーの女性(Schweinhaben)に挨拶をした。
前には店長らしき男(daitaiyou1)、後ろには明らかにカタギじゃない男(黒★彡)。
非常口には茶色のロングヘアーの女性(Schweinhaben)。入口には門番の男性(じゃが丸@闇社会の最底辺)。
諦めるしかなさそうだ・・・。
僕(勇次)は頭を抱えて大きくため息をついた。
と思った矢先、茶色のロングヘアーの女性(Schweinhaben)は前には店長らしき男(daitaiyou1)を羽交い締めにした。
「お前!!何を!!」
店長らしき男(daitaiyou1)はバタバタと手足を暴れさせているが、羽交い締めが解ける気配はない。
「早く!行きなさい!!」
茶色のロングヘアーの女性(Schweinhaben)は叫んだ!
一瞬フリーズしたが、もうこれしかない!!
クラスメイト(きたろう)と僕(勇次)はカウンター後ろにある、非常口めがけて思いっきり走り出した。
「逃がすか!」
明らかにカタギじゃない男(黒★彡)が追いかけてくる!
と思ったが、なぜかこけた!!
「ニャー!!」
ジョー(ジョー猫)が急に横切ったせいで、カタギじゃない男(黒★彡)はバランスを崩したようだ。
「あらやだ~、ジョー(ジョー猫)。だめじゃない~。」
金髪の女性(LEINAman)がニヤニヤしながら、ジョー(ジョー猫)を抱き上げ、
その後何かを僕(勇次)らに向けて呟いた。
でも僕(勇次)らには何を話していたのかは、聞こえなかった。
「久しぶりに楽しかったわ、強くなりなさいね。」
必死に走り、走り。追手がないことを確認して、僕(勇次)ら家に帰った。
その日はベッドの中ずっと震えていたが、特に何もなく、翌日を迎えた。
僕(勇次)は寝不足だったが、クラスメイト(きたろう)が無事か、
そしてクラスの女子(星龍)は無事なのか、ゲーセン「ごぼセク」(ごぼうセクスィ)は何だったのか聞きたくて眠い目を擦りながら登校した。
クラスメイト(きたろう)も同じようにクマがくっきりついた顔で投稿してきた。
しかし、クラスの女子(星龍)はいなかった。
その日の朝礼で、クラスの女子(星龍)は急な都合で引っ越したことが明かされた。
結局、彼女にゲーセン「ごぼセク」(ごぼうセクスィ)のことを、聞くことはできなかった。
放課後、僕(勇次)とクラスメイト(きたろう)は、警察(しょかさん)に昨晩あったことを相談し、
ゲーセン「ごぼセク」(ごぼうセクスィ)まで同行してもらうことにした。
しかし、ゲーセン「ごぼセク」(ごぼうセクスィ)の中身はも抜けの殻になっており、あのネオンのついたボロイ看板も、【海賊】(海賊)の筐体もすべてなくなっていた。
「あまりお巡りさんをからかうもんじゃないぞ!」
と、警官(しょかさん)に軽く怒られてその日は終わった。
結局、僕(勇次)とクラスメイト(きたろう)はクラスの女子(星龍)やゲーセン「ごぼセク」(ごぼうセクスィ)についてそこからしばらく調べたが、何のしっぽも掴めず、
クラスの女子(星龍)の事も、ゲーセン「ごぼセク」(ごぼうセクスィ)の事も、
あそこにいた人達のことも、そしてあの日の夜の事も、一切話すことはやめて、
すべて夢だったことに、忘れることにした。
あれから10年、僕(勇次)は一切の事を忘れることに、夢だったことにしたのに。
去年、就職してから毎月引き落とされている「ゴボウセクスィ」という名義の30000円が、この記憶を呼び起こしたので、こうして、筆を取ることにした。
記憶を頼りに書いているので、若干の相違があるかもしれないが、
もし、僕(勇次)の消息が途絶えたのなら、
僕(勇次)の代わりに
ゲーセン「ごぼうセクスィ」を、探して欲しい。